DOORS 序章 ■ 内藤更紗
ドアーズタイトル



序章タイトル


もし君の前にドアがあったら

01 まずは普通にノックでも え、返事がない?
02 次にはこっそり呼んでみよ それでもなにも聞こえない?
03 じゃあノブをちょいと押してみよう だめだって?
04 もすこし強く押しちゃえよ それでも開かなかったら
05 いい方法がある 引くの引くの それでもだめ?
06 スライド式ってこともあるよ 右へよいしょとずらそうか
07 右がだめなら今度は左
08 あ、そうか シャッターみたいに上にあげるのかもしれないぞ
09 それとも下にさげるのかな


10 中の人に聞こえるくらい大きな声をだしてみたら?
11 壁が厚いのかもしれない メガホン持って叫ぼうか
12 叫びながらドアをたたいてみたらどうかなあ
13 足も使って蹴りも入れろよ
14 頭も使え つまり頭突きだ
15 からだごと体当たりでぶちこわしちゃえ


16 手ごわいなあ カギをよーく調べてみよう
17 針金を使って開けられない?
18 カギごとこわせないか試してみようよ だめだって?


19 じゃあドアのまわりを調べようか
20 接着剤で固めてあったら溶かせばいい
21 セメントが詰まってたらドリルで開けちゃえ
22 えっ、お札が貼ってある? 剥がせよ、そんなもの


23 それでもだめならドアを壊すしかないよな
24 木のドアなら斧を使おう
25 石でできているならドリルで砕け
26 まだ壊れないならダイナマイトだ それでもだめ?


27 ドアをじーっと見よう 天井との間に隙間がないかな
28 よじ登ってみてよ そこから中に入れない?
29 ドアの下を掘ろう 掘って抜け穴から入れない?
30 でも、これだけやっていても中の人は何も気づかないわけ?


31 耳が聞こえないのかな それなら隙間から水を流してみたらどうかな
32 ドアの下から熱ーい手紙を差し入れるってのはどう?
33 反応なしか もう一度 もう一度考えてみよう


34 力まかせでなく やさしい音楽を聴かせるというのはどうかなあ
35 君の心情を言葉で訴えてみるというのはどう?
36 その人の好きな香りを流してみたらどうかなあ?


37 まてよ なにかオマジナイの言葉があるのかもしれないぞ
38 晴れた日がいいとか 雨の日にしか開かないのかもしれないし
39 もしタイマーロックがかかっているならそれまで待ってみようか
40 待ちあきたら 古事記みたいにドアの前でストリップをしてみようか
41 面白おかしく騒いでみようか
42 ドアにすがりついて泣いてみようか
43 泣き疲れて寝ているうちに開くことだってあるかもしれない・・・
44 そして目が醒めたらでいい よく考えてみよう


45 ひょっとしてそのドアは生命体で、生き餌を要求してるんじゃないのか?違う?
46 そのドアはただの、絵に描いたドアじゃないのか?違う? 
47 ドアの向こう側は壁に塗りこめられているんじゃないのか?違う?
48 そしてそのドアの向こうには、本当に君の知っている人がいるんだよね?


49 じゃ息をとめ 身をひそめてドアに張りつこう 雨の日も風の日も
  古いドアの一部となって内側から開けられる日をじっと待つんだ


  それでもだめなら


50 君はもうそのドアの前から立ち去っていい
  そしてもうドアのことはすべて忘れよう


  君の出逢ったのは「あかずのドア」だったんだ
  世の中にはごくまれにそんなドアがある



序章 了

TOPに戻る ●第1話を読む