更紗回廊BBS

スパムBOX更新中


[トップに戻る] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]
おなまえ
Eメール
タイトル
コメント
ごめんなさい。スパム対策のためURLの書き込みができなくなっています。
URLの記載が必要な方は、管理人までメールをしてみてね。
メールアドレスはトップページのmailボタンからどうぞ^-^ 別に用事がなくてもどうぞ^-^
 
添付File
暗証キー (英数字で8文字以内)
文字色

ロカボカレー・クリーナー 投稿者:更紗 投稿日:2016/11/18(Fri) 17:17 No.2161  
******************


 最近、ルイのやつはやたら機嫌がいい。
 今だって、調子はずれの鼻歌歌いながらキッチンで洗いものなんかしている。
 理由はわかっている。
 おれがやつの希望通り(貴重な休みを使って)早々と「今月の大掃除」をすませたからだ。

 大掃除って、年末の歳時記じゃなかったっけ?
 新しい年を迎えるのに家族で力を合わせるイベント、って思うだろ?
 でもおれとルイの家では、一年中大掃除をやっている。
 そういうとなんてきれいずきなんだと思われるかもしれないけど、実は逆だ。
 ふたりとも大大大の掃除嫌い。

 だから一緒に暮らし始めたとき、
 ふたりとも相手が掃除してくれることを期待していたのだった。
 自分からは動かず、相手がしびれをきらしてやりはじめるのを息をひそめて待っていた、お互いに。
(別に息をひそめる必要はないのだが)
 そして結局、根負けした方が動いてたというわけ。
 まあ、ふだん家にいることの多いルイのほうが多少分が悪かった、かもしれないが。

 問題は年末の大掃除だった。
 12月は仕事も忙しいし、クリスマスパーティや忘年会もあるし、
 家に帰っても年賀状やら庭仕事やらで、大掃除に割ける日なんて2日がせいぜいだ。
 それで家中の掃除ができるかというと、とても無理。
 キッチンの換気扇に取りかかると冷蔵庫の裏も気になるし、
 窓ガラスをふき始めると網戸の戸車の破損も放っておけないしで
 あとからあとから作業が増えて結局途中で力つきたときの後味の悪さ。

 できるまで何としてでも頑張ろうという完璧主義の(ただし体力はない)ルイと
 作業量と体力を考えてなんとか時間内に済まそうと考える現実路線の(ただし根性はない)おれとで意見が合わず、
 いつも険悪ムードの年の瀬だった。

 ある年の春、ルイが言った。
「今年の年末の大掃除だけど…よくよく考えたらさ、『年末』に必ずしもやらなくていいんじゃない?」
「…?」
「大掃除トイウモノハ、『わが家に年神様をお迎えする』という神道由来の考え方を別にすれば、
 年始まわりの来客に備えるとか、年に1度くらいは家の掃除をしつつ修繕が必要な箇所がないかどうか
 点検するというのが現実的な目的じゃないかと思うノデアッテ」
「ふむ」
 イントネーションがヘンだが、これはルイのくせである。
「一度に全部やらなくてもいいし、必ずしも年末にやらなくてもいいトオモウノデアル」
「それで?」
「タトエバ、家を12のパーツに分ける、トカデスネ。
 外まわりとか玄関とか、どうしても年末にやりたいという場所は今まで通り12月にして、そのほかは
 1月は寝室、2月は浴室、というふうに1年を通して分散させる、トカ」
「ふむ」
「この案のいいとこは、たとえばベランダ作業は真夏は暑くて大変だから春か秋に予定しておくトカ、
 窓ガラス拭きは北風に吹かれながらは嫌だから春にするトカ調整を…」
「ガラス拭きは10月だ」
「どうして?」
 ルイの口調が普段に戻った。
「年末に近くなってからの方が、ご近所サマに『あの家、もう大掃除やってるぞ』って思われてアピールになるだろ」
 やつが、呆れた顔でおれをまじまじと見る。
「……ジェイがそんなに見えっぱりだったなんて、初めて知ったよ」
 失礼な。

 それからふたりで1年間の大掃除作業を月ごとに割り振り、ルイが表に書きとめた。
 掃除をする場所だけじゃなくて、梅雨時には風呂のカビとりが必須とか、夏前にはすだれをつけなきゃとか、
 フローリングのワックスは3か月おきとか、クリスマスのイルミネーションは11月にしちまえとか、
 細かく決めていくうちに、これからの季節の移り変わりが目の前に浮かんでくるようだった。

 これからの、
 春も、夏も、秋も、冬も、こいつと一緒に、迎えていく。
 おれは掃除は、やっぱり好きじゃないけど、こいつもたぶん同じだろうけど、
 ふたりでならやれそうだ、そう思った。




 それで?

 それでうまくいったと、思うだろう、普通。

 …甘いな。



 完璧主義のルイは、毎年作業表はカンペキに作った。
 月はじめになると、休日のどの日を大掃除にあてるかを聞くためにどアップでおれに迫る。
 しかし天候やら急な用事やらルイの体力問題やらおれの根性問題やらで計画どおりできなかったことも少なくない。
 最初の頃、そういうときルイはじっとりと低気圧だったのだが、そのうち学習したのかおれに追及せずに
 さらっと積み残しを翌月にまわすようになった。
「今月まだ残ってるのは『前年度分の積み残し』のサンルームの掃除と『前年度分の積み残し』の書棚の整理だね」
「……」

 それでも今年は今まで積み残しもなく、今月までの作業を消化できたのだから、おれも進歩したものだ。
 そうそう最近、掃除道具に新顔が増えた。コードレス・クリーナーだ。
 コードレスなんて吸引力が、と馬鹿にしていたおれも、わりと使える吸引力と便利さにはまった。
 家電店の売場で目星をつけていたらしい機種のハンドルをおれに持たせて選ばせたのはルイである。
 おかげで大掃除のときだけじゃなく、普段の日も、気がつけば掃除機を手にしている自分がいる。
 しかも、あろうことか、楽しい…じゃないか。



「ジェイ」
 ルイがにこにこしながら近づいてきた。
「なんだか機嫌いいね。調子はずれの鼻歌なんか歌ってるし」
「ん?」
「理由はわかってるよ。
 僕がジェイの希望通り『ルイ特製ロカボカレー』つくってあげたからだろ?
 そんなに旨かったんだね、よかったあ!」
 やつは芯から嬉しそうに笑って、おれの前をすり抜けて行った。



******************



柿とシナモン 投稿者:更紗 投稿日:2016/10/19(Wed) 21:37 No.2160  
 *************

 抜けるような青空が続いた10月はじめ。
 珍しく家の電話が鳴ったので階下へ急ぐと、切り替わった留守電の向こうで
 なにやらむにゃむにゃっという音がしたかと思うとすぐに切れた。
「…………」
 腕組みをしてしばらく待ってみたがかかってこない。
 夕方、相方が帰ってきた。
 お帰り、と言うか言わないかのタイミングで門のインターホンが鳴る。
「何?」
「たぶん宅配だよ、出てくれる、きっと重いから」
「?」

 抱え込まれてきた段ボールを見て、予想が当たったのを知った。
 横に大きな「柿」の筆文字。
「…そっか、そんな季節だもんな…」
 うめくように彼が言う。
「昼間かかってきたのもきっとマキちゃんだ。お礼の電話したら?」
「うん」

    マキちゃんはジェイのお母さんで、ときどき故郷から柿とか梨とか、季節の果物を送ってくれる。
    僕とも何回か会ったことがあるが、いつもお互いに緊張してぎくしゃくし、
    間に入った彼も気を使って結局三人ともぐったり疲れるので今は直接の接触はない。

    それでいいのかと言われると何とも言えないし、
    ではどういうのが理想なのかと考え出すと袋小路に入るので、
    ただ川が流れるように、時が流れるように、日々の暮らしを続けていく。

    いつかは誰かに、何かに、彼を返さなければならないかもしれないとずっと思ってきたけれど、
    今は、それも彼自身が決めることだと思う。
    彼が魚なら、自分は水になるだけのこと。


「マキちゃん、いったいうちは何人家族だと思ってるんだ…」
 段ボールを開けると、中にはてらてらと光った巨大な柿がぎっしり。
 とりあえず隣家と裏の家と駐車場を借りている家に5つずつ配り、残りは…
「1日ひとり3個ずつ食べるか、…いや、4個…」
「とても無理だよ。というか、…糖質高いからジェイは食べない方がいいと思う」
「そっか…わかった」

 というわけでマキちゃんの柿はジャムになって、毎日僕の胃に納まっている。(シナモンをかけると美味しい)
 夕陽色のジャムをパンに塗るたびに、僕は「お母さん」というものについてぼんやり考える。
 秋の午後がゆっくりと過ぎていく。


 *************



9月スタート☆ 投稿者:更紗 投稿日:2016/09/04(Sun) 21:53 No.2151  
事故から6か月と18日が過ぎた先月26日、
魔法使いのドクター(↓参照)から治療終了の宣言を受けました。
まだ100%元通りとはいえないものの、これ以後は「日にち薬」でリハビリ頑張って治してね、
ということかなと脳内補完しています。
とりあえずひと区切りです。
ご心配いただいた方、励まして下さった方、本当にありがとうございました(ぺこ)
今後ともよろしく〜(調子に乗るな)




おめでとうございます^^ 紫音 - 2016/09/07(Wed) 01:55 No.2152  

更紗様、こんばんは^^
治療終了おめでとうございます。まだまだご無理は出来ないとは思いますが、気持ちだけでも楽になられたのではないでしょうか。
リハビリはご自宅で自分でするのでしょうか??
ゆっくり負担にならぬよう頑張って下さい♪
応援していますー!
また遊びに参ります。まだまだ暑いですが夏バテにもお気を付けて^^



ありがとうございます^-^ 更紗 - 2016/09/09(Fri) 17:29 No.2153  

紫音さん、こんちは!
やっと治療終わりました〜お祝いありがとうございます^0^
これからは、これまで理学療法(マイクロ波etc.)と並行して行っていた
地味〜な筋トレがメインです。
でもゆるい上り坂を歩いているうちに気がついたらいつのまにか頂上に着いてた!って
言える日が一日でも早く来るように頑張りたいです^-^

とか言いながら、四国に旅行に行きました。
時間が空いたので、お遍路の一番札所に「でも」行こうか、と
参拝した先で引いたおみくじが「小吉」…
やっぱり「でも」がダメだったか。
でも相方は同じ「小吉」なのに内容がスゴクいいんだよなあ。うーん。

ではでは、
暑さも台風も乗り越えて、一緒に秋を呼びましょ〜^-^



ごめんねー。 投稿者:もっちゃん 投稿日:2016/09/01(Thu) 19:43 No.2149  
更紗さま。
ホントにホントにお久しぶりです。
お恥ずかしながら、更紗さんが事故に遭われた事も、しんどいリハビリ生活されてた事も、たった今知りました。
なんという不義理ものでしょう。ごめんなさい。
でも回復にむかわれている様子で、ひと安心。
今さらですが、どうかお大事になさってください。

更紗さんのお庭には遠く及びませんが、何でも枯らす私が初めて収穫までこぎつけました。タカノツメ。
クリスマスっぽいカラーでテンション上がりました。
たくさん採れて、ペペロンチーノ何皿できるか楽しみです。
月旅行の物語、
ドクターがどこに行っていたのか、とても気になるわたくしです。





いらっしゃい^-^ 更紗 - 2016/09/03(Sat) 10:22 No.2150  

もっちゃん、お久し振りです〜不義理はこちらもです。来てくれて嬉し^-^

ドクターは先月末に復帰しましたが、
再会時、ごま塩だったのがシルバーグレーに変貌していました。
どうやら月の裏世界で魔法会議に出かけていた模様…
もしくは猫社会に拉致されていたとか^-^;;

というのは想像ですが
たぶん何かの病気だったのではないでしょうか。
もし病気以外なら
「何の病気だったんですか?」という代診ドクターへの質問に対して
「いや、病気ではなくて」とまず否定の言葉が出ると思うので。
「どこかの病院に入院+自宅療養」だったのかなあ、と思っています。これも想像だけど。

タカノツメ、収穫おめでとう!
あの色と、つんつんした形が可愛いよね。
辛さ&旨さに悶えているもっちゃんの姿が目に浮かびます。
タカノツメじゃないけど、シシトウってパックで買うと、時々すごく辛いのが混じってるっしょ?
それを甘辛く煮てひとつずつ交互に食べて、
相手が「当たり」がでて悶絶するのを楽しむ…というのをときどきやります。
「ロシアンルーレット」って^-^←最近連勝

ではでは、
暑かった暑かった暑かった(しつこい)夏もそろそろ終わりそうな希望が…地球の公転に感謝^0^



ふたりの月旅行。 投稿者:更紗 投稿日:2016/08/10(Wed) 16:32 No.2148  
******************

それは、小さな違和感から始まった。
7月中旬のことである。
その日、いつものように整形外科のドアを開けた僕は、
待合室から診察室につながる中待合の扉がぴたりと閉まっているのに気づいた。
半年間通っているが、こんなことは初めてだ。
なかの様子はまったくうかがえない。
落ち着かない気持ちで座っていた僕に、看護師が近づいてきて言った。
「今日は診察がありませんので、リハビリ室の方へどうぞ」
きっと急患なんだと、そのときは思った。
個人医院で医師はひとりしかいない。きっと手いっぱいなのだ。

翌週、いつもの診察時間に医院を訪れた僕は、ドアの張り紙の前で立ちつくしていた。
「すみませんが本日は休診します」

50がらみの飄々とした、どこかとぼけたところのある医師の顔が目に浮かんだ。
彼に何かあったのだろうか。いつから休診しているのだろう。
わからないまま、帰途についた。

日はもうすっかり暮れていた。
駐車場から家までの間の坂道の途中に、アメリカンブルーのしまちゃんの家がある。
僕の姿を見ると、ゆっくり伸びをしながら門の前の階段を降りてくるのが定番なのだ。
だが、今日は、その姿がやけに小さい。

「あれ?」
しまちゃんじゃない。ほっそりとした日本猫で、しまちゃんと同居しているチャコだ。
チャコはめったに外に出ないし、呼んでも警戒して近づいてきたことがない。
そのチャコが階段をトットッと降りてきて僕を見上げ、すがるように鳴いた。
「ニャーニャー」
(え?)
「ニャーニャー、ニャーニャーニャーニャー」
(しまちゃんがね、しまちゃんがね、しまちゃんがね、しまちゃんがね…)

猫は泣かない。でもチャコの眼からは今にも涙が溢れだしそうだった。
しまちゃんの身に、何かがあったのだ。
病気?入院?それとも…
最悪の事態は、考えたくなかった。

翌日。
医院が開いているのに安堵して、いつものとぼけた医師の診察を待っていた僕に看護師が言った。
「今日は代診です」

前の先生は、という言葉を僕は呑み込んだ。
スタッフは一様に硬い表情で、忙しく働いている。
帰りがけに近くの薬局でも訊いてみたが、言葉を濁されるばかりだった。
しまちゃんの家の階段も、薄闇に沈んでいる。

2週間が過ぎた。
整形外科ではドクターの代診が続き、
しまちゃんはもちろんチャコの姿さえまったく見かけなくなった。

みんな、どこへいってしまったのだろう。
あまりにも突然に。
まるで幻みたいに。
暑さで世界全体が陽炎のように揺らいで見える。
もはや、僕に泣きすがったあの夜のチャコでさえ、実はずっと前に亡くなっていた亡霊だったのだと
知らされたとしても驚かなかったかもしれない。

そして8月8日になった。
事故から半年目のレントゲンを撮り、説明を終えた代診のドクターは何気なく僕に告げた。
「院長は来月はじめに復帰しますよ」
「え」
僕は目を見開いた。
「…何の病気だったんですか?」
若い医師はちょっと考えて、にっこり笑った。
「内緒」

(「内緒」かあ…でもとにかく、よかった)復帰のめどがたったんだ。
久しぶりに軽い足どりで坂道を登りかける。
「あっ!」

僕は目を疑った。
しまちゃんの家の階段に、黒いシルエットが動いている。
チャコかと思ったが、尻尾が太い。
降りてくる。ゆっくり伸びをしながら、降りてくる。

「しまちゃん!!」

しまちゃんだ、生きてた。前よりひとまわり小さくなったように見えるけど、それでも生きてた。
僕はしまちゃんの尻尾を撫でた。何度も、何度も。
ふと見ると、チャコがしれっとした顔で少し距離を置いて控えている。

「しまちゃん、どこ行ってたの?」
整形外科のドクターと一緒に、月旅行でもしてたのか?
しまちゃんは僕を見上げて、小さく鳴いた。

僕にはそれが、こう聞こえた。


「内緒」


******************





真夏の夜の夢 投稿者:更紗 投稿日:2016/07/28(Thu) 12:36 No.2147  
昨夜、2度目のチャレンジでWindows10にアップグレードできた。
朝からダウンロードを開始して15時間…
(それでも1度目の17時間よりは早くなった)
そわそわとほぼ15分おきに様子見でそばに張りついていた。
気分はすっかり手術室前の廊下でウロウロしてる家族。

深夜近くなってついに新しい初期画面が出た。ヤッター☆☆最高☆
さっそくこのサイトで報告の書き込みをしようとしたが…
あれ??サイトは開けるのに、投稿のボタンをおしたとたんに接続が切れる。
まあ、でる(←パソの名前です)も疲れてるのかもしれない。
なにしろ大手術だったからな。触ると熱くなっているし、
ゆっくり休ませよう…(僕も眠いし)

そして翌朝。
ついにネット&メールもつなげなくなった。
あちこち調べると、どうやら接続機器のひとつがWindows10非対応だとわかる。
周辺機器の対応可否は良く調べたつもりだったが…穴があった。
そうとわかれば速やかに7に戻そう。
また長時間かかるかもしれないと思ったが、今度は12分で見慣れた画面に戻った。

一夜の夢だったなあ…
でもやるだけやったから、もういいや。
Windouw10はもう少しおあずけ。
当分7をしっかり使おう。



空高く。 投稿者:更紗 投稿日:2016/07/13(Wed) 15:49 No.2145  
事故後、5ヶ月が過ぎた。連日の猛暑から一転して戻り梅雨である。
以前よく聴きに行っていたベーシストが、ギネス認定世界最高齢現役ジャズバンドの一員として
演奏するというので出かけて行った。
79歳という歳にも驚いた(いつの間に)が、それでもメンバーの中では一番若く
最高齢は90歳のビブラフォン奏者である。
会場がお寺の納骨堂というのが作用したのかどうか(笑)
座席は満員、梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばす盛り上がりを見せて大盛況だった。
まだまだいける、らしい。
そういえば東京都知事選でも76歳のジャーナリストが立候補を表明していた。
痛快だ。
なんだか、空が急に高くなったみたい。

さて、報告が遅くなりました。
「ローマ人の物語」は最終巻「ローマ世界の終焉」まで読み終わりました。
続く「ローマ亡き後の地中海世界」と
「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年」も読了。
鳥になって一国の(地中海の、というべきか)歴史を俯瞰したようなずっしりとした感覚が
なんともいえない。
そしてたぶん作者は、たとえようもなくクールで美しい鳥なのだ。

周辺の民よりも小柄な体格で、農耕を生業とし、穀物が主食で、入浴好きな多神教のローマ人。
大国に囲まれ国土が狭く、資源もなく、頭脳だけに勝負をかけざるを得なかったヴェネツィア人。
どちらも日本と日本人に共通点があり、
そしてどちらも努力を重ねて繁栄し、栄華をきわめ、滅んでいった。
作者のまなざしの先には日本がある。
美しい鳥は僕たちに問いかけているように思える。
あなたは、どうしたいの、と。



塩野七生「ローマ人の物語」新潮社/新潮文庫
塩野七生「ローマ亡き後の地中海世界」新潮社
塩野七生「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年」新潮社/新潮文庫



帰還 投稿者:更紗 投稿日:2016/06/24(Fri) 13:18 No.2142  
事故後、4ヶ月半が過ぎた。梅雨の合間を縫い、リハビリを兼ねて
少しずつ庭仕事を始めた。

薬剤を計って入れ、水を注いで蓋を閉める。
胸の高さに持ち上げて8の字にぶんぶん振り回す。
理想的にはシェーカーの手つきで。より理想的には100回ほど。
地面におろし蓋からハンドルをはずして上に引っ張る。あとは上下にピストン運動だ。
内部の圧力が高まってハンドルが動かなくなったら準備完了。
僕のスプレーヤー(噴霧器)である。

薔薇は葉の出ている期間中ずっと薬剤散布が必要だ。
10年前に世話を始めた頃は週に2度、非農薬の自家製薬剤を散布していた。
根性なしでへろへろになって続けられずに月2回の農薬に切り替え、
それでも天候や時刻や近隣の動向を気にしながらの器具や服装の準備や後片付けが
嫌でたまらず、好きで始めたハズの庭仕事が義務感にかわってるってそれ何なのって
思いながら黙々と作業後のスプレーヤーを洗った。

楽しくないなら楽しくすればいい。そう思って目の前を見ると
スプレーヤーのまるい、滑らかな肩がある。
とりあえず僕はそれを「ぷく」と名づけてみた。
「ぷく、仕事だよ」と心中で呼びかけながら散布作業を始める。
これって人としてやばいんじゃないの、と思いながら
でも2次元よりはちょっとましか、いや違わないか、なんて。

そうやって怠け心をだましだまし、細々と数年間続けてきた散布作業が
ある日突然とまった。
介護が必要な猫が我が家の一員になったのである。
待ったなしで庭は放任、草が茂ろうが水が足りなかろうが虫が来ようが
庭仕事はギリギリの必要最小限度になり、スプレーヤーの出番もほとんどなくなった。
薔薇は病気や虫でボロボロになりながら、なんとか花をつけていた。
5年半後の秋、猫は遠くへ行った。

春になればまた庭仕事で忙しくなるだろうと、僕は思った。
だが春になる前に怪我で動けなくなり、薔薇の葉が出始めた頃、
僕は薬剤散布を友だちに頼んだ。月に2回、彼がスプレーヤーを扱うのを僕は窓から見ていた。

怪我をしてから4ヶ月後、キャッツテールに虫害を発見し
薔薇と併せて薬剤散布をしようと、久しぶりにスプレーヤーを手に取った。
シェイクして植物たちにスプレーし、薬剤を使い切って空気抜きを開ける。
蓋をはずし、洗剤を入れてシェイクしてボトルの内側を洗い、
再び圧をかけてスプレーし、スプレー口の内側を洗浄する。
それから何回か水を入れてすすぎ、外側をスポンジで洗い、同様にスプレー口の内側もすすぐ。

そういえば「ぷく」だったよな、と、洗いながら思う。
白くてまるい、滑らかな肩。久しぶりの感触だ。

こいつは僕の、相棒だった。
嫌でたまらなかった散布作業。何かと理由をつけてさぼりたくてたまらなかった散布作業。
僕の依怙地なところもヘタレなところもみんな知っていて、
それでも一緒にやってきた、あの日々。

帰ってきたんだ。どこかからそんな声が聴こえた。
何から? どこから? よくわからないけど、確かにそんな声が聴こえた。
僕はじっと耳をすませる。


梅雨の晴れ間の昼さがり。子燕が空を横切っていく。
僕ってやっぱり、人としてやばいかな。



お帰りなさい、 sankai - 2016/06/25(Sat) 22:08 No.2143  

こんばんは。リハビリを兼ねた庭仕事、お疲れさまです。
やっとここまで帰ってこられた、という感じでしょうか。
庭の色々な所からも、更紗さんにお帰りと声がかかっている気がします(^-^)

「ぷく」って更紗さんの小説の「ジョシー」みたいでかわいいですね。
毎年今ごろ、梅雨になると「クピクピ、キュルル」という
鳴き声を思い出して、楽しい気分になっています(^-^)


我が家は今、気づいたらノラ猫の家族と裏庭をシェアしていて、
子猫が4匹、倉庫の床下から出入りしています。
母猫がそばにいるので今は見守っていますが…(^-^;



雨猫 更紗 - 2016/06/28(Tue) 01:07 No.2144  

sankaiさん、こんばんは^-^
おかげさまでキャッツテールも回復し、
薔薇も少しずつ返り咲きを始めてくれました。庭は今、雨の中。
イチジクの葉おもてを叩く音、オリーブの葉を揺らす音、タイルに跳ねて踊る音…
庭はとても賑やかです。どんな声がこっそり紛れていてもおかしくないですよね^-^

4匹の子猫かあ…可愛いだろうなあ。
母猫のそばが一番幸せな頃ですね。これからどんな人生が待っているのか、
みんな無事に育ってほしいですね。
僕の近所の猫ニュースは、ここんとこしばらく顔を見せなかったご近所のアイドル猫、
アメブルのしまちゃん(飼い猫)がまた元気な顔を見せてくれるようになり、
会うたびにこっそり尻尾を触っているうちに、僕たちだけに
鳴いてかけよってくれるようになったことです。「尻尾触って〜」って(ヘンタイにゃ)←どっちが
それにしても、猫は雨が似合うような気がするのはどうしてだろう。




春の夢 投稿者:更紗 投稿日:2016/05/31(Tue) 11:14 No.2140  
40年といえばハイハイしていた赤ん坊も社会の中堅になっている年頃だ。
その年月を経て、名作「ポーの一族」の新作が発表された。
題して「春の夢」。

正直、発売のニュースをきいてから心穏やかじゃなかった。
村上春樹風に言えば「春の熊みたいに」ソワソワウキウキして、
家の中にある「ポーの一族」を読み返して胸の高鳴りを押さえていた。
あのエドガーに会える。
気分はすっかり「同窓会」(笑)

物語の舞台は1940年代のイギリス。
時を超えて旅をするバンパネラのエドガーとアランが
大戦中の祖国を離れ家族と離れて避難してきたユダヤ人の少女と出会う。

…あれ?

頁を開けたとたんに、小さなとまどいを感じる。
エドガー、随分変わったなあ。

それは40年もたつのだし、その間の他の作品も読んでいるのだから絵柄の変化は知っているはずなのだ。
でも以前の物語を読んでからこの新作を見ると、やっぱりその違いに愕然としてしまう。

華奢で折れそうだった少年の体は、がっしりとした首と腰をもった青年に近い体型に。
流れるような軽快な動作は固く直線的なポーズに。

そして、彼のまとっていた雰囲気も変わった。

以前の彼は、美しくミステリアスな野生の獣のようだった。
見る人を射すくめるような冷たい青い瞳を持ち、
いるはずのない、いてはならない異端者として
人間に対し常に距離を置いていた孤独で感受性の強いパンパネラの少年だった。
その彼が、今回の物語では行きずりの少女に興味を抱き、親切に話をきき、感情を移す。
「普通の人間の男」にしか見えなかった。
少女の身の上話をじっくりときいてやる姿には「オジサン」の風格さえ感じる。

画面全体から受ける雰囲気も変わった。
以前は、コマの中の人物のまわりに背景や余白が広くとられていて
それが全体に、吐息のような空気感や詩情あふれる余韻を醸し出していた。
それが今回の物語では、登場人物たちの多さもあるのだろうか、
コマは満員電車のように人物と台詞とでぎゅうぎゅう詰めだ。
なぜ?頁数が足らないのだろうか。

このときになってようやく、
僕は、自分が大きな思い違いをしていたことに気がついた。(にぶい)

今回の「春の歌」は、「ポーの一族」の「続編」じゃない、「新作」なんだ。

40年前のエドガーたちの物語を、当時の雰囲気のままで続けていくのではない。
登場人物たちの設定だけを生かして、今の作者がこの物語を描くとしたらどうなるかという試みなのだ。
だから(画風はもちろん)テーマも切り口も雰囲気も受け継いではいない、
今の作者ならではの「新作」ということ。

…そうだよな。同窓会へ行っても、昔と同じ姿の人に会えるわけじゃない。
相手が「永遠に年をとらないバンパネラ」だから、つい、もしかしたらと思ってしまった。
それこそがはかない「春の夢」なのかもしれない。


物語は夢だ。だから作者の萩尾望都さんは新作で「新しい夢」をつむぐことに挑戦した。
新作のストーリーはまだ続いていく。ニュータイプのエドガーとアランの旅も続いていく。




萩尾望都「春の夢」 月刊フラワーズ 7月号



予感 投稿者:更紗 投稿日:2016/05/25(Wed) 10:25 No.2139  
コルセットがとれて1週間がたった。拘束から解放されて爽快だ。(シャワーじゃなく)風呂に入れるなんて何か月振りだろう。散歩にも出かけられるようになった。梅雨前の庭仕事をと、白モッコウの花後剪定をしていたら…あれ?

身体が痛くて3時間でダウン。コルセット装着時より明らかに短い…
つまりコルセットで保護されていた部分の筋肉が衰えているということらしい。これからは毎日の筋トレを追加してリハビリしていく必要がある。
寝たきりの第1段階、コルセットの第2段階を経て、その後の長ーい最終段階に入ったというわけか…(遠い眼)
焦ってもしょうがない。今できることを考えよう。カミサマに長い休暇をもらったと思って(休んでばかりという気もするが)

つるブルー・ムーンの季節もそろそろ終わり、オリーブの花が散り始めた。「ローマ人の物語」は今、40冊目「キリストの勝利 下」である。静かに雨雲が近づいている。

[1] [2] [3]
- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 暗証キー

- Joyful Note -
Modified by isso