更紗回廊BBS
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ミモザ 投稿者:更紗 投稿日:2017/03/21(Tue) 17:32 No.2176  

あたたかな春分の日の朝、家の前の道を掃いていると知らない人に声をかけられた。
「あの、ミモザは…」
僕は笑顔をつくる。これで2人目。
見上げると淡青色の空が広がっている。
一昨年前まで満開の黄色い花たちが咲き誇っていた空間だ。

12年前、この家に引っ越してきた僕と相棒は
シンボルツリーにしようと庭の南角にミモザを植えた。
高さこそ3メートル弱はあったものの、幹は細々として貧弱な枝に
「かかしみたいやな」と隣家の親父に冷やかされたものだ。
その言葉に発奮したのかどうか、ミモザは陽光を浴びてみるみるうちに枝を伸ばし、
一年後の春には樹全体を金色のまるい花々に覆いつくさせて親父を唸らせた。

僕たちは満開の枝をバケツに入れて門の前に出し、
道行く人にお裾分けをした。花瓶にそのまま差してもいいし、
春分の日近くになるとお墓に供えた人もいたらしい。
教会の人もたくさん抱えていった。
それでも余った分は、近くの公民館に飾ってもらおうと持っていった。
そうして3月末になると、剪定を終えたばかりのミモザはもとの「かかし」の姿に戻る。
それはまるで、役目を終えた「幸福の王子さま」みたいだった。

花枝を抱いた誰もが嬉しそうに微笑む。
春の訪れを告げる黄色い小さな花は
引っ越してきて近所に誰も知り合いのいない僕たちの背中を押してくれたのだ。

でもひとつだけ、不思議なことがあった。

僕は満開の時期にいろんな友達を呼んだことが何度もあったのだけど、
どういうわけか、いつもその日が雨になるのだ。
最悪のときには、やむをえないドタキャン、という日もあった。
この樹は、誰か他の人間に間近で褒められたくはないのだろうか。
もしかして、誰かを待っているのだろうか。
それは本当に、変な空想だった。

5年目の春が終わったあと、僕たちの家に1匹の子猫が来た。
目の見えない、足の不自由な猫で、リビングに置かれたケージが彼の住まいだった。
リビングの南向きの出窓からミモザの正面が見える。
春先には黄金色の花房が、それ以外の季節は銀色の葉がさわさわと風に揺れた。

それはいつ頃からだったのだろう。
南からの潮風のせいか、葉の陰に潜んだカイガラムシのせいか
枝の出方が少しずつ減り、花つきが少しずつ悪くなっていった。
台風の多い年になると葉の色が黄味を帯び始め、
時折落葉が目につくようになった。

大きくなりすぎて薬剤散布は枝先まで届かず、
僕たちは毎年強剪定を繰り返した。
内部の虫害には薬剤を注入した。
結果ははかばかしくなく、樹勢を盛り返すことはできなかった。

10年目の春、僕は僅かに咲いた花枝を切って、門前のバケツに入れた。
その年初めて見る、小学生の女の子と母親の親子連れが足をとめた。
「よかったらどうぞ」
女の子がぱっと顔を輝かせた。母親が言葉を添える。
「去年もいただいたんですよ…」
「あ、そうでしたか」
ふたりを見送って、思わず頬が緩んだ。よかった。

ふり絞るように花を咲かせたあと、ミモザは目に見えて衰えた。
幹の根元部分からかなり上部まで縦に黒ずんだ窪みができ、無数の小さな裂け目が入った。
僕たちは土壌改良し、支柱も立て直し、最後の手段とカンフルを打った。1度、2度。
樹は黙していた。

その秋、しとしとと続く長雨のなかで
夏のおわりに体調を崩した猫が息をひきとった。

ミモザがはっきりと葉を落とし始めたのはそれからである。
まるではらはらと涙を流すように
白茶けた葉が枝を離れて風に舞い、地面を埋めた。
もう助からないのは明らかだった。
ミモザはゆっくりと枯れていった。

冬が終わり、例年ならば開花を1ヶ月半後に控えた2月に、
僕は相棒に、ミモザの伐採を頼んだ。
もうそろそろとミモザの花を楽しみにしている人たちに、枯れた姿を見せたくなかったからだ。
ある朝、僕がまだ布団の中にいるときに彼はそれを実行した。
音に驚いて玄関を飛び出した僕の眼に入ったのは、
切り株だった。

「こんなに細かったっけ…」

こんなに小さかったっけ。こんなに。


僕はリビングの出窓から庭を眺めた。
ミモザがあったはずの空間にぽっかりと穴があいて、冬空が見えている。
そこから冷たい風がまっすぐ家の中に吹き込んでくるようで、思わずぶるっと身をすくめた。



    ***


   僕はその時、
   ミモザは猫のあとを追うように行っちゃったんだなあと思っていたんだけど、
   今は、そうじゃない。
   もしかしたら、あの樹は僕たちを守っていたんじゃないだろうかと思う。
   大きく枝を広げて、外から吹き込んでくる悪いものから、猫や、僕たちを
   守ってくれていたんじゃないだろうか。

   そう思うようになったのには理由がある。
   僕がその後職場で不運としか言いようのない怪我を負ったのは
   ミモザを切り株にしてから
   たった2日後のことだったからだ。

   そして、もしそうなら、
   きっとあの樹は、今も最強のガーディアンとなって天国で枝を広げているんじゃないだろうか。
   春先には黄金色の花房を、それ以外の季節は銀色の葉をさわさわと風に揺らせて。
   その腕の下には目の見えるようになったあの猫が、ほかの猫たちと遊び呆けているんじゃないだろうか。
   春分の日の幸せな夢を、
   あの樹は今も僕たちに見せてくれる。
   天国のミモザ。




春間近。 投稿者:更紗 投稿日:2017/02/27(Mon) 21:52 No.2174  
バイト三昧♪
充電中……



お誕生日おめでとうございます! 投稿者:sankai 投稿日:2017/02/01(Wed) 23:59 No.2171  
すべりこみ…!
更紗さんお誕生日おめでとうございます(^-^)
お元気で、素敵な誕生日を迎えられたでしょうか

厳しい寒さが続きますが、日差しが少しずつ眩しくなって、
枝の蕾や足元の枯草の下からのぞく緑に、春が近いと感じる
この時期が好きです。

今年も聖さんの二人に会えてうれしかったです(^-^)
ありがとうございます(来年まで待ちきれない感じです…!)

新年のごあいさつもまだでしたが、今年もよろしくお願いします



春を待つ日々 更紗 - 2017/02/02(Thu) 01:55 No.2173  

sankaiさん、いらっしゃい!
すべりこみ大セーフです。ありがとうございます。

毎年この頃になると「寒いときに生まれたもんだなあ…」と
なんとなく損をした気持ちになるというか、嘆息したい気分になっていたものですが、
なるほど…
考えてみれば、日も少しずつ長くなってくるし、
小さな春の足音を待つ楽しみもありますよね。
今年の春はどんな春だろうとか、今年の花はどんな花だろうとか。
その頃自分は、どんな自分だろうとか。

子どもの頃のような無邪気な夢は持てないですが、
自分が好きといえるような年にしたい、などという野望を胸に(笑)
今年もどうぞよろしくお願いします(甘えん坊の彼氏くんにもよろしく^-^)



お誕生日おめでとうございます 投稿者:加月聖 投稿日:2017/02/01(Wed) 00:58 No.2170  
更紗さん、お誕生日おめでとうございます。
今年もまたお祝いできることに感謝しています。
そして2014年から続いている二人をまた連れてきました。



*****

駅前にある駐輪場は公営施設。
俺は7時から16時までか、13時から22時まで管理室にいる。
この時間以外は建物の外にある施錠式駐輪スペースに停める決まりになっている。
4人で交代に勤務するようになってから何故かルールを守る人が増えて今の所駅前に路上駐輪されることはなくなった。
「おはようございます」
朝から元気な人達がここを通って行く。
「希望(のぞみ)さん、おはようございます」
「結羽(ゆう)くん、おはよう」
彼はは高校生で受験生。
俺達は必ず名を呼ぶ。
「あ、結羽くん!おはよう」
…同僚も、呼ぶ…。
「結羽くんって高校生なのに背は高いし声は渋いしイケメンだよねー。」
「そうだね」
彼女は朝8時から昼12時までのバイト。フリーターらしい。
彼女にも結羽はかっこよく写るのか。ネクラだけどいいのかな?
デートしてても1時間くらい全く話をしないこともザラだ。
隣にいてくれればそれでいい…のは俺だけで結羽は違ったらどうしよう。
…そうなんだ、二人共にネクラなんだ。
知り合ってから三ヶ月位になる。
この間手を繋いだ。
キスはまだ、…うん。
俺の方が社会人だし年上なんだからリードしないといけないんだろうけどさ…。
もう一人のバイトは夕方に入る。これも結羽を見ると黄色い声を出す。
「結羽くんっていうんですね、彼。」
「そうらしいよ。」
出来るだけ結羽の情報は与えないようにしよう。
しかし。
もう一人の男性の同僚が気になる。
「どうして彼が結羽くんってわかったんですか?」
と、根掘り葉掘り聞いてくる。
結羽に言わせるとそれは俺に興味があると言うが、俺は結羽に興味があると踏んでいる。
結羽が大学に受かればバス通学になるから駐輪場は使わない。
毎朝会えないのは寂しいけれど、狙われなくていいから安心できる。
…………………
希望は地味だ。
笑わないし、おしゃれしないし、髪は梳かさないし、猫ばっかり可愛がる。
そんな彼だけど最近は僕の好みに合わせようと頑張っている。
しかし、僕が受験生だからと色々と気を遣ってくれていて、恋人として付き合ってはいない。
時々、デートに誘っても手を繋ぐのがやっと。
…次は僕からキスしてみようかな。
それと、第一希望の大学、本当は隣駅。
また駐輪場使うんだけど、希望がニヤニヤ笑うから秘密にしてるんだ。
折角勇気を出して告白したのに、早く大学に合格してきちんと恋人として認めてもらいたいな。


*****

今年は更紗さんが健やかに過ごせますように…。



ありがとうございます^-^ 更紗 - 2017/02/02(Thu) 01:25 No.2172  

聖さん、いらっしゃい!お祝いありがとうございます^0^
今年も結羽くんと希望くんのカップルに逢えて嬉し♪
イケメンの結羽くん、いいなあ〜
というか毎朝好きな人に会える環境って羨ましすぎ^-^
ふたりの初デートはどんなかなって、いろいろ妄想してしまった(ふふ)
もっともっと会いたい気持ちが募っています(←恋?)
幸せになれよお〜!

今年は僕も、怪我も病気もしないぞ!と固く心に誓いました。
年明けから3度続けてパブロンの世話になりましたが、なんとか元気に
バイトに励んでいます。
朝日を浴びて通勤の人波の中を歩ける幸せ。最高です^0^



2016年も残り僅か。 投稿者:更紗 投稿日:2016/12/31(Sat) 22:57 No.2167  
紅白を観ておせちをつつく大晦日の夜です。
今年は怪我とリハビリで過ぎましたが、
これまで知らなかった世界の扉をあけて
人の情けが身に染みた一年でした。

お見舞い下さった方、ありがとうございました。
ただただ感謝であります。

どうかよいお年を、
そして素敵な新年をお迎え下さい^0^



あけましておめでとうございます 加月聖 - 2017/01/01(Sun) 01:12 No.2168  

本年もよろしくお願いいたします

ここ数年
Eテレで年越ししています
トビハゼのトピーが可愛いです
因みに火曜日は猫の日です
…そんな年越しでした
これから紅白とジャニーズカウントダウンのV6を見る〜\(^o^)/



新しい年☆☆ 更紗 - 2017/01/01(Sun) 22:09 No.2169  

聖さん、新年おめでとうございます。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします^0^

うむむ、Eテレで年越し、それは盲点でした〜
僕はCDとジャニーズの方を行き来してました。
ちなみに紅白で印象に残ったのは
1.大竹しのぶさんの『愛の讃歌』
2.有村架純さんの司会
3.椎名林檎さんとKinki Kidsでした。
これだけでも紅組優勢かな?と思ってたら
本当に紅組が勝って嬉し♪

…しかし初詣のおみくじは
去年に続き、末吉でした^-^;;
きっと今が運勢の底。これからは上がるだけ?(から元気)



メリー☆クリスマス 投稿者:更紗 投稿日:2016/12/25(Sun) 00:57 No.2163  
少し冷えてきました。お元気ですか>皆さま
どんな聖夜を迎えてますか?

どうか素敵な夜を……


更紗@ほろ酔い中



メリークリスマス☆ sankai - 2016/12/25(Sun) 07:51 No.2164  

更紗さんお久しぶりです。
今年はどんなイブを過ごされましたか?

私は昼、夕方、夜、それぞれ予定があって揃わない家族と別々に過ごしました。
その合間に年賀状を作ったり、
菓子作りで余ったドライフルーツやナッツをいっきに片付けよう!と
シュトレンに挑戦してみたりしました。
(本来はアドベント用なのでイブでは遅いらしいんですが;)
ひとりの時間が多かったわりに充実したイブでした。

それから今、私のひざで若いイケメンがバンザイして寝ています。
春に倉庫の下で産まれた4匹のうち、彼だけなついてしまいました。
のどをすぐにゴロゴロならす甘えん坊の彼氏ができました(笑)



わお、イケメン^0^ 更紗 - 2016/12/26(Mon) 12:01 No.2165  

sankaiさん、お久しぶりです。
甘えん坊の彼氏、いいなあ〜〜
sankaiさんのハート&膝をゲットって、大したヤツですね^-^

今年のイブもいつもと同じようにお酒やチキンや料理を買って、
頼んでおいたロカボのクリスマス・ケーキをふたりで食べました。
これにはおまけの楽しみがあって、
去年たまたま、同梱されていたケーキ用の金色のピック(トナカイと柊とメリー・クリスマスの文字のと)を
手元供養していた三匹の猫のうち、センターの虎姫の金糸の袋に
冗談でかんざしみたいに飾ってみたら爆受けしてですね…
今年も増やせと^-^;;;

クリスマスが近づくにつれ、
「いいなあおまえ、今年はもっと飾りが増えるぞ」なんて毎日虎姫に話しかけている始末。
パティシエも、まさかピックがこういう用途に使われるとは夢にも思っていないに違いない…。

今年の柊のピックは真紅でした。
センターの金糸の袋に真紅の柊と金色のトナカイと文字を飾り(超ハデ…)
左右の銀色の雪丸と黒助の袋には虎姫のおさがりの去年のピックをちょこんとさして、
今年のイブの夜はみんなで笑って過ごしました^-^


sannkaiさんのシュトレン、美味しそうですね←ナッツ好き
日を追うほどにドライフルーツやナッツの滋味が染み出して、ますます美味しくなるのだとか?!
クリスマス・ウィークはまだ始まったばかり。楽しみが増えますね。
ときどき寒い日も来るけれど、あったかくしてお過ごし下さい(イケメン君も)^-^



ロカボカレー・クリーナー 投稿者:更紗 投稿日:2016/11/18(Fri) 17:17 No.2161  
******************


 最近、ルイのやつはやたら機嫌がいい。
 今だって、調子はずれの鼻歌歌いながらキッチンで洗いものなんかしている。
 理由はわかっている。
 おれがやつの希望通り(貴重な休みを使って)早々と「今月の大掃除」をすませたからだ。

 大掃除って、年末の歳時記じゃなかったっけ?
 新しい年を迎えるのに家族で力を合わせるイベント、って思うだろ?
 でもおれとルイの家では、一年中大掃除をやっている。
 そういうとなんてきれいずきなんだと思われるかもしれないけど、実は逆だ。
 ふたりとも大大大の掃除嫌い。

 だから一緒に暮らし始めたとき、
 ふたりとも相手が掃除してくれることを期待していたのだった。
 自分からは動かず、相手がしびれをきらしてやりはじめるのを息をひそめて待っていた、お互いに。
(別に息をひそめる必要はないのだが)
 そして結局、根負けした方が動いてたというわけ。
 まあ、ふだん家にいることの多いルイのほうが多少分が悪かった、かもしれないが。

 問題は年末の大掃除だった。
 12月は仕事も忙しいし、クリスマスパーティや忘年会もあるし、
 家に帰っても年賀状やら庭仕事やらで、大掃除に割ける日なんて2日がせいぜいだ。
 それで家中の掃除ができるかというと、とても無理。
 キッチンの換気扇に取りかかると冷蔵庫の裏も気になるし、
 窓ガラスをふき始めると網戸の戸車の破損も放っておけないしで
 あとからあとから作業が増えて結局途中で力つきたときの後味の悪さ。

 できるまで何としてでも頑張ろうという完璧主義の(ただし体力はない)ルイと
 作業量と体力を考えてなんとか時間内に済まそうと考える現実路線の(ただし根性はない)おれとで意見が合わず、
 いつも険悪ムードの年の瀬だった。

 ある年の春、ルイが言った。
「今年の年末の大掃除だけど…よくよく考えたらさ、『年末』に必ずしもやらなくていいんじゃない?」
「…?」
「大掃除トイウモノハ、『わが家に年神様をお迎えする』という神道由来の考え方を別にすれば、
 年始まわりの来客に備えるとか、年に1度くらいは家の掃除をしつつ修繕が必要な箇所がないかどうか
 点検するというのが現実的な目的じゃないかと思うノデアッテ」
「ふむ」
 イントネーションがヘンだが、これはルイのくせである。
「一度に全部やらなくてもいいし、必ずしも年末にやらなくてもいいトオモウノデアル」
「それで?」
「タトエバ、家を12のパーツに分ける、トカデスネ。
 外まわりとか玄関とか、どうしても年末にやりたいという場所は今まで通り12月にして、そのほかは
 1月は寝室、2月は浴室、というふうに1年を通して分散させる、トカ」
「ふむ」
「この案のいいとこは、たとえばベランダ作業は真夏は暑くて大変だから春か秋に予定しておくトカ、
 窓ガラス拭きは北風に吹かれながらは嫌だから春にするトカ調整を…」
「ガラス拭きは10月だ」
「どうして?」
 ルイの口調が普段に戻った。
「年末に近くなってからの方が、ご近所サマに『あの家、もう大掃除やってるぞ』って思われてアピールになるだろ」
 やつが、呆れた顔でおれをまじまじと見る。
「……ジェイがそんなに見えっぱりだったなんて、初めて知ったよ」
 失礼な。

 それからふたりで1年間の大掃除作業を月ごとに割り振り、ルイが表に書きとめた。
 掃除をする場所だけじゃなくて、梅雨時には風呂のカビとりが必須とか、夏前にはすだれをつけなきゃとか、
 フローリングのワックスは3か月おきとか、クリスマスのイルミネーションは11月にしちまえとか、
 細かく決めていくうちに、これからの季節の移り変わりが目の前に浮かんでくるようだった。

 これからの、
 春も、夏も、秋も、冬も、こいつと一緒に、迎えていく。
 おれは掃除は、やっぱり好きじゃないけど、こいつもたぶん同じだろうけど、
 ふたりでならやれそうだ、そう思った。




 それで?

 それでうまくいったと、思うだろう、普通。

 …甘いな。



 完璧主義のルイは、毎年作業表はカンペキに作った。
 月はじめになると、休日のどの日を大掃除にあてるかを聞くためにどアップでおれに迫る。
 しかし天候やら急な用事やらルイの体力問題やらおれの根性問題やらで計画どおりできなかったことも少なくない。
 最初の頃、そういうときルイはじっとりと低気圧だったのだが、そのうち学習したのかおれに追及せずに
 さらっと積み残しを翌月にまわすようになった。
「今月まだ残ってるのは『前年度分の積み残し』のサンルームの掃除と『前年度分の積み残し』の書棚の整理だね」
「……」

 それでも今年は今まで積み残しもなく、今月までの作業を消化できたのだから、おれも進歩したものだ。
 そうそう最近、掃除道具に新顔が増えた。コードレス・クリーナーだ。
 コードレスなんて吸引力が、と馬鹿にしていたおれも、わりと使える吸引力と便利さにはまった。
 家電店の売場で目星をつけていたらしい機種のハンドルをおれに持たせて選ばせたのはルイである。
 おかげで大掃除のときだけじゃなく、普段の日も、気がつけば掃除機を手にしている自分がいる。
 しかも、あろうことか、楽しい…じゃないか。



「ジェイ」
 ルイがにこにこしながら近づいてきた。
「なんだか機嫌いいね。調子はずれの鼻歌なんか歌ってるし」
「ん?」
「理由はわかってるよ。
 僕がジェイの希望通り『ルイ特製ロカボカレー』つくってあげたからだろ?
 そんなに旨かったんだね、よかったあ!」
 やつは芯から嬉しそうに笑って、おれの前をすり抜けて行った。



******************



柿とシナモン 投稿者:更紗 投稿日:2016/10/19(Wed) 21:37 No.2160  
 *************

 抜けるような青空が続いた10月はじめ。
 珍しく家の電話が鳴ったので階下へ急ぐと、切り替わった留守電の向こうで
 なにやらむにゃむにゃっという音がしたかと思うとすぐに切れた。
「…………」
 腕組みをしてしばらく待ってみたがかかってこない。
 夕方、相方が帰ってきた。
 お帰り、と言うか言わないかのタイミングで門のインターホンが鳴る。
「何?」
「たぶん宅配だよ、出てくれる、きっと重いから」
「?」

 抱え込まれてきた段ボールを見て、予想が当たったのを知った。
 横に大きな「柿」の筆文字。
「…そっか、そんな季節だもんな…」
 うめくように彼が言う。
「昼間かかってきたのもきっとマキちゃんだ。お礼の電話したら?」
「うん」

    マキちゃんはジェイのお母さんで、ときどき故郷から柿とか梨とか、季節の果物を送ってくれる。
    僕とも何回か会ったことがあるが、いつもお互いに緊張してぎくしゃくし、
    間に入った彼も気を使って結局三人ともぐったり疲れるので今は直接の接触はない。

    それでいいのかと言われると何とも言えないし、
    ではどういうのが理想なのかと考え出すと袋小路に入るので、
    ただ川が流れるように、時が流れるように、日々の暮らしを続けていく。

    いつかは誰かに、何かに、彼を返さなければならないかもしれないとずっと思ってきたけれど、
    今は、それも彼自身が決めることだと思う。
    彼が魚なら、自分は水になるだけのこと。


「マキちゃん、いったいうちは何人家族だと思ってるんだ…」
 段ボールを開けると、中にはてらてらと光った巨大な柿がぎっしり。
 とりあえず隣家と裏の家と駐車場を借りている家に5つずつ配り、残りは…
「1日ひとり3個ずつ食べるか、…いや、4個…」
「とても無理だよ。というか、…糖質高いからジェイは食べない方がいいと思う」
「そっか…わかった」

 というわけでマキちゃんの柿はジャムになって、毎日僕の胃に納まっている。(シナモンをかけると美味しい)
 夕陽色のジャムをパンに塗るたびに、僕は「お母さん」というものについてぼんやり考える。
 秋の午後がゆっくりと過ぎていく。


 *************



9月スタート☆ 投稿者:更紗 投稿日:2016/09/04(Sun) 21:53 No.2151  
事故から6か月と18日が過ぎた先月26日、
魔法使いのドクター(↓参照)から治療終了の宣言を受けました。
まだ100%元通りとはいえないものの、これ以後は「日にち薬」でリハビリ頑張って治してね、
ということかなと脳内補完しています。
とりあえずひと区切りです。
ご心配いただいた方、励まして下さった方、本当にありがとうございました(ぺこ)
今後ともよろしく〜(調子に乗るな)




おめでとうございます^^ 紫音 - 2016/09/07(Wed) 01:55 No.2152  

更紗様、こんばんは^^
治療終了おめでとうございます。まだまだご無理は出来ないとは思いますが、気持ちだけでも楽になられたのではないでしょうか。
リハビリはご自宅で自分でするのでしょうか??
ゆっくり負担にならぬよう頑張って下さい♪
応援していますー!
また遊びに参ります。まだまだ暑いですが夏バテにもお気を付けて^^



ありがとうございます^-^ 更紗 - 2016/09/09(Fri) 17:29 No.2153  

紫音さん、こんちは!
やっと治療終わりました〜お祝いありがとうございます^0^
これからは、これまで理学療法(マイクロ波etc.)と並行して行っていた
地味〜な筋トレがメインです。
でもゆるい上り坂を歩いているうちに気がついたらいつのまにか頂上に着いてた!って
言える日が一日でも早く来るように頑張りたいです^-^

とか言いながら、四国に旅行に行きました。
時間が空いたので、お遍路の一番札所に「でも」行こうか、と
参拝した先で引いたおみくじが「小吉」…
やっぱり「でも」がダメだったか。
でも相方は同じ「小吉」なのに内容がスゴクいいんだよなあ。うーん。

ではでは、
暑さも台風も乗り越えて、一緒に秋を呼びましょ〜^-^



ごめんねー。 投稿者:もっちゃん 投稿日:2016/09/01(Thu) 19:43 No.2149  
更紗さま。
ホントにホントにお久しぶりです。
お恥ずかしながら、更紗さんが事故に遭われた事も、しんどいリハビリ生活されてた事も、たった今知りました。
なんという不義理ものでしょう。ごめんなさい。
でも回復にむかわれている様子で、ひと安心。
今さらですが、どうかお大事になさってください。

更紗さんのお庭には遠く及びませんが、何でも枯らす私が初めて収穫までこぎつけました。タカノツメ。
クリスマスっぽいカラーでテンション上がりました。
たくさん採れて、ペペロンチーノ何皿できるか楽しみです。
月旅行の物語、
ドクターがどこに行っていたのか、とても気になるわたくしです。





いらっしゃい^-^ 更紗 - 2016/09/03(Sat) 10:22 No.2150  

もっちゃん、お久し振りです〜不義理はこちらもです。来てくれて嬉し^-^

ドクターは先月末に復帰しましたが、
再会時、ごま塩だったのがシルバーグレーに変貌していました。
どうやら月の裏世界で魔法会議に出かけていた模様…
もしくは猫社会に拉致されていたとか^-^;;

というのは想像ですが
たぶん何かの病気だったのではないでしょうか。
もし病気以外なら
「何の病気だったんですか?」という代診ドクターへの質問に対して
「いや、病気ではなくて」とまず否定の言葉が出ると思うので。
「どこかの病院に入院+自宅療養」だったのかなあ、と思っています。これも想像だけど。

タカノツメ、収穫おめでとう!
あの色と、つんつんした形が可愛いよね。
辛さ&旨さに悶えているもっちゃんの姿が目に浮かびます。
タカノツメじゃないけど、シシトウってパックで買うと、時々すごく辛いのが混じってるっしょ?
それを甘辛く煮てひとつずつ交互に食べて、
相手が「当たり」がでて悶絶するのを楽しむ…というのをときどきやります。
「ロシアンルーレット」って^-^←最近連勝

ではでは、
暑かった暑かった暑かった(しつこい)夏もそろそろ終わりそうな希望が…地球の公転に感謝^0^

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